- エディターのおすすめ
- 2004、16トラック、1時間 3分
ブルー・ノートブック
ドイツ出身でイギリスを拠点にする作曲家、マックス・リヒターは、イラク戦争に抗議する作品として2003年に制作したアルバム『The Blue Notebooks』で、弦楽四重奏とエレクトロニックミュージック、そして、俳優ティルダ・スウィントンによるカフカとポーランドの詩人Czeslaw Miloszの詩の朗読といった多様な要素をミックスしながら感動的で一貫性のある作品を作り上げるという、並外れた手腕を発揮した。同作は、象徴的で心を揺さぶる作品としてすぐに高い評価を獲得し、そのメランコリックな音楽は、クラシックの枠を超えて、幅広いオーディエンスに受容された。収録曲の一つである「On the Nature Of Daylight」が、マーティン・スコセッシ監督の『シャッター アイランド』(2010年)やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画『メッセージ』(2016年)で使用されたことをはじめ、『The Blue Notebooks』の楽曲は、その後の映画音楽に影響を与え続けている。2018年には、ニューアレンジやリミックス、ボーナストラックなどを含む『The Blue Notebooks (15 Years)』としてリイシューされ、再び注目を浴びた。同アルバムのハイライトの一つは「Shadow Journal」であり、ここでは高らかに響き渡るヴァイオリンとスポークンワード、通常より1オクターブ低い音域で脈打つように鳴らされるベースラインが見事な調和を見せている。「Old Song」でのリヒターは、19世紀のコンセプトアルバムとも呼ぶべきシューマンの歌曲集『Dichterliebe(詩人の恋)』から1曲をピックアップし、そこからクラシカルなボーカルパートを取り除いて、伴奏部分のみを効果的に使っている。一方、オルガンをフィーチャーした「Iconography」や「Organum」では、オーセンティックな趣と共に瞑想的な世界観を描き出している。