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- 2017、7トラック、47分
セレナーデ第10番 変ロ長調
『セレナード第10番 変ロ長調「グラン・パルティータ」』ほど、モーツァルトの管楽器に対する優れた直感がよく表れた作品はないだろう。これは、それぞれ2本のオーボエ、クラリネット、バセットホルン、ファゴット、4本のホルン、そしてコントラバスという13の楽器のための組曲で、全7楽章という壮大なスケールを持っている。初演は1784年にウィーンで開催されたチャリティコンサートにおいて行われたと考えられており、この日の演奏は好評を博したと伝えられている。七つの楽章は、豊かな響きのコンサートホールで聴きたいシンフォニックなものから野外で楽しむのに適した親しみやすい雰囲気のものまで、多彩な音楽性を輝かせている。第1楽章は、ゆったりとした序奏の段階から交響曲のような荘厳さを発揮し、推進力のあるリズムに乗って、ピンと背筋を伸ばしたようなほどよい緊張感を漂わせる「アレグロ」へと移っていく。同じようにシンフォニックな広がりを感じさせる第3楽章の「アダージョ」では、オーボエ、クラリネット、バセットホルンが、息の長いメロディとともに優美なシークエンスを描き出し、リスナーをうっとりさせる。第2楽章と第4楽章はいずれもシンプルなデザインによる「メヌエット」となっているが、モーツァルトは実に多彩な楽器の組み合わせを生かした対照的なトリオ(中間部)をそれぞれの楽章に配して、聴き手の関心を引き付ける。第5楽章「ロマンツェ」にも同様のことがいえる。ここでは情感豊かで幻想的なテクスチャーの「アダージョ」が、非常に動きの速いパッセージワークでファゴット奏者のブレスのスタミナを試すかのような中間部「アレグレット」を挟み込んでいる。そして、モーツァルトは終楽章の「アレグロ・モルト」でフルアンサンブルが生み出すにぎやかなサウンドとリズミカルな主題で、オーディエンスを興奮の渦へと巻き込んでいく。